京都deお散歩 90 ~高島屋 ユトリロ展~

 
 
 今月の24日から5月6日までの短期間ですが、高島屋京都店で「ユトリロ展」が開催されています。
 
 きょうは美容院に行ったあと、寄ってみたいと思っていたところ、なんと!美容院でユトリロ展の招待券をもらいました!
 
 
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 高校生の頃、どういうわけか、ユトリロの暗いパリの絵に何処ということなく、妙に惹かれ、ユトリロの白いパリの建て物の絵に、華やかなパリの別の一面を見たような気がしていました。
 
 きょうはユトリロの絵を若い頃から晩年、それも亡くなる2日前まで、並べられた順に観ることができました。
 
 暗い色使いのパリの街には、通りに並ぶ建物ばかり、人はまったく描かれていませんでした。
 
 どの絵もどの絵も通りと建物ばかり。一枚だけならそれはそれでいい絵だと思うのですが、こうも同じような絵ばかり描くというのは、やはり普通の精神状態ではなかったのではないかと思いました。
 
 彼の母は、制作と恋に忙しい毎日で、彼は母にかまってもらえず、かわいがられずに祖母のもとで暮らしたそうです。また、彼の父親はだれなのかもわからなかったようです。ワインを毎日飲む祖母のもとで、さびしい幼少期を過ごしたようです。
 
 母には、実に多くの恋人がいたようで、ルノワールロートレックでさえ、母の恋人だったようです。
 
 幼いころからワインを祖母と一緒に飲んでいたことで、次第にワインにおぼれるようになり、一日に何リットルも飲み、「リトリロ」と呼ばれていたそうです。
 
 人の出てこない絵ばかりを観たあと、突然、花の絵が出てきました。
 
 彼に恋人ができたのです(といっても、人妻だったようです)。その女性の夫が亡くなり、彼女と結婚をしたそうです。ああ、よかったぁと思いました。
 
 そのあとの絵には、人が描かれているのです。少し太めでウエストがしまっているドレスを着ていて、ヒップが太めの女性たちでした。
 
 結婚して絵がいい方向に変わったのかと思ったのですが、実はちがったようです。
 
 ヒップの大きな女性は、彼を苦しめた「女」の象徴だったようです。
 
 あまりにもワインを飲み過ぎ、警察にまで捕まったほどで、精神的にもかなり大変な状態に陥っていたようで、彼はずっと部屋に閉じ込められ、幽閉されたような暮らしをしていたようです。
 
 彼の自由を奪う、彼を苦しめた妻を象徴するのが、このヒップの大きな女性だったようです。
 
 彼は、どんなにアルコール中毒に陥っていても、若い頃から、絵筆を持てば手の震えが止まり、一日に一枚は必ず絵を描いたそうです。
 
 最後までパリの通りや教会を描き続けたユトリロは、風邪をこじらしたようで、急に亡くなったようです。
 
 彼の絵には、建て物の壁ばかりが出てきていました。そして、教会。
 
 母は無神論者だったようですが、ユトリロは洗礼も受けていたようです。
 
 宗教に関心を示したようです。
 
 あまりにも悲惨で、絵を観ているとつらくなってしまいました。
 
 私は、大学の時には、もうひとり、ユトリロ風のパリの建て物をよく描いた佐伯祐三の絵にも惹かれました。彼のパリもまたやはり暗いのです。
 
 華やかなはずのパリがこんなふうに暗く見えるとは。
 
 でも、元々パリはあまりお陽さまも当たらないところだということですから、案外、こういう風景に見えても不思議はないのかもしれません。パリに行って確かめてみたいものです。
 
 そういえば、どことなく暗く、そしてやはり妙に惹きつけられる田中一村奄美の自然を描いた絵も、南の島をこんなふうに描いたのをなんて独特な描き方だろうと思っていましたが、鹿児島へ行ったときに見たうっそうとした自然を思えば(ハワイ島もそうでした)、あの暗さは必ずしも特殊な描き方ではなく、その土地そのものが持つ独特なものをそのまま心でとらえて描いたものなのかもしれません。
 
 たくさんの絵を一気に観ると、一枚だけみた時とはちがい、ユトリロの孤独の深さが感じられて、胸が痛くなってしまいました。