ハロー和裁 3 ~祖母の遺した着物~

 
 
 この夏、帰省した息子には、ある仕事が期待されていました。
 
 実家の祖母がこの6月に亡くなり、離れに住む叔母が祖母の遺品を整理しています。祖母の部屋を整理するのに、和服をたんすごと母屋のほうにもらってほしいとのことなのですが、なんせみんな70代80代の老人ばかりで整理しているので、たんすを運んでくれる息子の力が期待されていたのです。
 
 息子が、80代の私の父と一緒に、ひょいひょいと軽々運んでくれたので、やっと祖母の部屋が叔母の部屋として落ち着いたようです。
 
 祖母のたんすのうちのひとつは、大正時代のものです。実家にはそういうたんすがいくつもあります。太秦の撮影所にきてもらってもいいぐらいですが、父にとっては、実の母(この間亡くなった祖母は、父には継母にあたります)が花嫁道具として持ってきたものなので、大事に使っているのです。
 
 さて、そのいくつかのアンティークなたんすの中には、祖母の着物がいろいろ入っていました。
 
 祖母は、娘時代、和裁の学校に通っていたので、80歳を過ぎてもまだ和裁をしていました。
 
 親戚に呉服屋さんがあり、そこのお店の着物は、よく祖母が頼まれて縫っていました。
 
 よほど年を取らないと着られない着物ばかりなので、たいていはそのままたんすに入れてあるのですが、中には、え!?どうしてこんな着物が入っているの?というような、若々しい着物が数枚ありました。
 
 着られそうなのは好きなだけ持って行っていいと言われていたので、いただいてまいりました。
 
 
               サーモンピンクの無地の着物
 
                   帯とお襦袢付き
 
              いったいだれの着物でしょう??
 
              いただきました~。
 
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 これって、叔母さんのために祖母が縫ったのでは?と思うのですが、叔母はまったく着物には無頓着。何枚か捨てたり、親戚にあげて、残ったので、好きなだけ持って行ってとのこと。
 
 
                   菊の柄の着物
 
                 これも叔母のだと思います。
 
             昔、叔母が着ていた記憶があるのです。
 
 
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 持って帰ってきたのを、息子の彼女と一緒に、わぁ~~、ひゃあ~~、などと言いながら一緒に着ていました。
 
 この着物、私にはまったく似合いませんでしたが、彼女にはぴったり!とても似合うのです。その上、彼女は生まれ月の花が菊なのだとか。アンティークで、かえって若い人に合いそうです。これに、アンティークな帯をどこかで探したら、彼女のお誕生日に着られそうです。
 
 私の振り袖と帯まで見つかりました~。祖母のたんすに入っていたんだ~。
 
               。。。十年も前に着た振り袖
 
 
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        どう見てもこの年では締められそうにない柄と色合いの帯
 
 
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 彼女に、「お正月に着られる人っていったら、あなたしかいないんだけど・・・」と言ったら、「私ももうむりかも・・・。・・・・・・・・、でも、最後のチャンスかなあ・・・???」(彼女ももう来年は30歳なのです・・・)
 
 振り袖だけはどんなに若づくりしても、もう絶対無理。あ、黒柳徹子さんは着ておられますよねぇ・・・。
 
 また、こんなのもあり、一応、もらってきたけど、いったい祖母は、どの孫のために縫っておいたのでしょう???
 
            
                 絣のアンサンブルとお襦袢
 
 
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 女の子の孫ができたときのためにもらっておいたらいいと叔母。そんなうまいこと、できるかなあ??
 
 さすがに彼女も、「これはいくらなんでも私はもう着られない」と言って笑っていました。
 
 
 次の着物ですが、普段着られそうに思えて、これならいけるかなと思ってもらってきたけど・・・。
 
 私はまったく似合いませんでした。
 
 で、彼女がそでを通すと、うわあ、とても似合う~。
 
 「これは私ですね!」と彼女。
 
 どんな帯が合うのかなあ??とふたりで考えていました。
 
 
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             なかなかいい感じの柄の帯がありました。
 
             何かに使えそうなので、もらってきました。
 
 
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            これは、ちょっとした「いわくつき」の羽織
 
            親戚の呉服屋さんに頼まれて祖母が縫ったのですが
            何でもどこか、断ちまちがったのだとか・・・。
 
            それで、弁償して、手元に残ってしまったのだそうです。
 
            なんとかわからないように仕上げてあるのだそうです。
 
            これをほどいて、洋服にしたらいいと叔母がいうのですが、
            そでを通してみたら、ほんわりと暖かい。なかなかいい着心地。
            秋、冷え出す頃、家ではおろうかしら、と思って、もらってきまし             た。
 
 
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 そのほか、これは昭和初期の時代のドラマに使えそうだとかいうようななかなかアンティークな羽織など、いろいろありました。昔の人は、羽織って、必需品だったのだそうです。そのうち、また、ゆっくり見てこようと思います。
 
 でも、羽織って、あまり着ないかなあ。
 
 祖母のおかげで、なかなか楽しいひと時を過ごしました。お正月には、彼女と着物を着て、写真やさんにでも行こうかと、ちょっと本気で言っていました。
 
 祖母には、今まで、たくさん浴衣を縫ってもらったし、若いころは、お茶会用の着物も縫ってもらってきました。なかなか着物を着る機会はないので、見ることもなかったのですが、今回のことをきっかけに、たんすから着物を出してきて、眺めたりなんかしていました。
 
 でも、彼女と最後に話していたことは、「着物と宝石には手を出さないでおこう」でした。こればかりは、危ない、危ない。
 
 祖母が縫って、だれのためにか遺しておいた着物は、時々見て楽しんでみようかしらと思います。