ライ麦の田舎パン
堀川北山のL’AMI DU PAINでフランスのパン職人ヴィンセント・ブルーレさんのパン作り教室に参加してきました。
このパン屋さんには、フランスから取り寄せたレンガ造りの石窯があります。
100年以上も前の石窯の作りだそうです。
この石窯が作れるのは、現在フランス人でたった5人しかいないそうです。
日本では、このお店に1台あるのみ。
薪で火をつける石窯です。薪はいつも山からヴィンセントさんがとってこられるのだそうです。
フランスパンの生地とライ麦パンの生地を
フランスパンの粉と一緒にさらに混ぜ合わせます。
お砂糖を入れないハード系のパンには
発酵を促進させたり、焼き色を美しくつけるという役割を
果たしてくれるのだそうです。
機械でこねて準備されたものを使いました。
常温で3時間ほど第一発酵させてあるそうです。
さて、混ぜるのですが、すごい量で、たいへん、たいへん。すごく力がいりました。
ヴィンセントさんの話では、今ではミキサーで混ぜるけど、昔はすべて手ごね。フランスのパン職人は、パンを捏ねるのにすごく力を使うので一回捏ねると4キロも体重が減ったそうです。で、捏ね終わると、パンを発酵させている間、近くのお店で赤ワインを飲み、美味しいものを食べて、・・・。そうしたら、体重が元に戻ったそうです。
ヴィンセントさんの大きな手だと力強くしっかりこねられるのですが、私たちの手では、なかなか・・・。
やっと捏ねられて、パン生地を丸めて休ませます。
私たちも疲れましたが、パンも疲れているので、休ませてあげるのだそうです。
形成
形成後の二次発酵は、木棚に入れて、常温で休ませました。
通常のパン教室では、ナイロンをかけてお湯を入れたボールの上で二次発酵をしますが、パンも人間と一緒で生きているので、私たちがナイロンをかけられると苦しいのと同じで、パンもナイロンをかけられては苦しいのだそうです。
それで、息ができる木の棚に入れるのが一番パンにはいい環境になるのだそうです。
私はいつも発酵機を使っています。32度ぐらいに設定して発酵させていたのですが、サウナに入れて発酵させているようなものだったんだなあと思いました。
室温25度ぐらいだと、2時間ぐらいかけてゆっくり発酵させるのがベストだそうです。
部屋の状態や季節によって大きく変わるので、パン生地は捏ねる水の温度で調整するぐらいで、あとは、常温で時間をかけるのがいいのだそうです。
木の棚がない普通の家においては、木のたんすがいいのですって。息ができるから。「靴下、ちょっとよけて、パン生地を置いてください」と笑いながら言っておられました。
パンは生きているのです。
石窯に火が入れられました。朝も使っているので、少しだけ薪を入れればいいのだそうです。石窯は中の温度はなかなか下がらず、ゆっくりじっくり焼き上がるのだそうです。
この石窯は、火を入れている時にはパンが入れられない仕組みになっています。
火が上の段にも燃え上がるのです。
薪のいい匂いが立ち込めました。
発酵が終わり、石窯の用意ができるまで、私たちはランチ。
すごく美味しかったです。
パンもお代わり自由。噛んでいると、いい味がするライ麦パンたち。
みんな味がちがっていました。このお店では、同じ生地は使わず、
種類によってすべて生地を変えているそうです。
温かいパンの中にチーズが溶けてとても美味しかったです。
デザート
さて、火が消えました。薪の前に置かれたのは、鉄でできたもので、これが火を入れられた石窯に入れられていました。3キロもあるそうです。それを取りだして、置かれています。
中の温度が下がってきた時にこの熱い熱い鉄を石窯に入れ、温度調節をするそうです。
水が入れられていました。カリッと焼くには水蒸気が
必要だということのようです。
そして、この石窯には水道の栓がついていて、火が
消えて灰をぬぐう時に水が撒かれます。
水蒸気になるとともに、灰を布でぬぐうのにもぬぐい
やすくなるようです。
灰がぬぐえたら、いよいよパン生地を入れて、40分ぐらい焼きました。
焼きあがりました。クープはみんなそれぞれ好きなように入れました。
私のは、シェル型のクープ
直径30cmほどの大きな大きなライ麦パン
お店のはこんな柄
発酵を待っている間など、ヴィンセントさんにいろいろ質問することができました。
ヴィンセントさんの話を聴いていて、私は目からうろこのような思いを受けました。
今までレシピ通りに測り、時間を守り、早くできるように発酵温度を30度越えるように人工的に環境を作り出したり、・・・。
ヴィンセントさんいわく、レシピで守るべきことはお塩の量だけ。あとは、すべてパン生地が自分に語りかけてくる声を聴いて、そのパン語をわかることが一番大切。
作り方は人それぞれで、「美味しい」という行き着く先につければそれでいい。自分にとって、捏ねていて楽しい心地よい生地加減が毎日作っているとわかるようになってくるとのこと。
それは、パン生地との語らいだそうです。
常温が基準で、それも、パンを作る部屋の状態、季節のちがい、オーブンや石窯のちがいによって、すべて変わってくるのだけど、目で見て温度を知り、パン生地の語ってくる言葉でパン生地の発酵の状態を感じることが大事なことなのだとのこと。
自分は50%は教えられても、あとはそれぞれの人が感じてわからないとパンは焼けないのだと言っておられました。
レシピに従って、パン生地とパン語で語り合わずに作ってきたパン。今までのパン作りは、マニュアルに従って仕事をしたり、子育てをしたりするのと同じなんだなあと、きょうのヴィンセントさんの話を聴いていて、人生観がガラリッと変わったような感じを受けました。
この冬にハワイに行こうと計画しているのですが、これも、50%はハワイについての知識が大切。でもあとの50%はその人その人の心とハワイの心との語り合いでどんな旅ができるかということなんだなあと気づきました。
ハワイで人生観が変わったという人もいると聞きましたが、きっとその人も、ハワイの自然の語るフラ語が感じられたという実感を得たということなんだろうなと思いました。
パン作りでとても大切な人生観を聴いたという思いを感じたパン教室になりました。
お店にはたくさんのパンたち。
何人かの職人さんが焼いているのだそうですが、ヴィンセントさんには、ひと目でだれが焼いたか、わかるのだそうです。
パン作りは、材料よりも技術。
それを焼いた職人の技術と人柄がパンにそのまま表れるのだそうです。
パン職人の仕事は、パン生地と語らい合って、温度計や時計で測ることなく、発酵の状態を見極めること、焼く温度と時間がわかること。
パンは、2時間経って冷め、その後、5~6時間後、冷めたものを食べると一番よくその味がわかるそうです。いいパンは、翌日になっても味は落ちないし、特に今回の田舎パンは1週間ぐらいは焼かなくても美味しいのだそうです。