今夜は久しぶりに映画を観に行きました。
このみなみ会館という映画館は、繁華街の若者もよく訪れるような映画館ではありません。
パチンコやさんの横から2階に上がっていくと、古めかしい昔ながらの映画館になっています。
新しい映画ではなく、再上映の映画が中心で、けっこう内容のいい映画を上映している映画館です。
こんなに古めかしい、場末の映画館に、金曜日の夜、何人かの人が、ぽつんぽつんとひとりずつ椅子に腰かけ、映画を観ているのです。
昔は、東寺のすぐ近くの歓楽街だったところです。今ではそんな雰囲気はすっかりなくなって、パチンコ屋さんと古めかしい映画館だけが、わずかにその名残を残しているかのようなところです。
商業映画としては、あまりお客さんの入るような映画ではないかもしれないけど、でも、質のいい映画を上映している数少ない映画館のようです。
ちょっと足を伸ばして、夜の古めかしい映画館で、ぽつん、ぽつんとそれぞれが離れて椅子に腰かけて、いい映画を観るというのは、人知れず、いい時間の過ごし方のように思いました。
今日の映画、自殺して見せかけることと、霊柩車を乗り回してお葬式に参列することばかりしている青年が(母親に傷つけられることがいろいろあるようです)、79歳の老女から生きるエネルギーを与えられ、老女に恋をするというお話でした。
老女は、ちらっと見えた腕にユダヤ人の番号を刺青されている女性で、80歳がちょうどいい死に頃と自分で決めて、80歳のお誕生日に死ぬ予定をしていました。
彼女から生きる力を与えられ、乗りまわしていた霊柩車を崖から捨てて、バンジョーをならして老女亡きあとも生きる力を得るのでした。
この映画を観ていると、40年前のアメリカで起こったこと、つまり、母親に傷つけられて、生きる力を失い、自殺をもてあそぶ青年がいたということが、40年経っても、まだ日本でもその状況は通じるものがあるのだなと思いました。
老女が青年に、死ぬことに戯れているのは、生きることを避けているだけだと言いました。そのことばが印象的でした。