鶏卵あんかけうどん
この間から食べたかった鶏卵のあんかけうどん。
あんかけの葛は、吉野の葛。
昔、お隣に美味しいおうどん屋さんがありました。小さい頃は、よくそこのおうどんを出前してもらっていました。
私はいつもあんかけうどん。弟はいつもすうどん(素うどん)。
私は小さいころから生姜が好きで、あんかけの甘みが好きでした。
弟は、いつも「すうどん!」と言って、すうどんしか頼みませんでした。
私にはそれがあまりにも素っ気ないことだと思っていたのですが、同じようなことを息子もするのです。
息子はいつもスパゲティーは、にんにく風味だけのアーリオオーリオを作るし、頼みます。特に新しいお店に入ったら、アーリオオーリオと言うのです。私にしてみたら、それって、あまりにも素っ気ないのですが、アーリオオーリオが一番美味しくて、その上、そこのお店の腕がわかるのだそうです。
これが一番美味しいとよく弟は言っていたのですが、ひょっとしたら、同じようなことを思っていたのでしょうか?
小さい頃は、カレーも近くのお店で出前でした。洋食屋さんがあって、お客さんが来られたら、お寿司かカレーを出前で取っていたのです。カレーはお客さんに出前で取るほどのご馳走でした。
まだカレールーは売ってなかったのかもしれません。
洋食屋さんのカレーは、上に卵がのっていました。そして、ソースをかけて食べていました。
おうどん屋さんでは、夏になるとかき氷も出前してもらっていました。まだ冷蔵庫も電化製品ではなく、注文して持ってきてもらう大きな氷を入れて使っていたころの話です。夏の冷蔵庫には三ツ矢サイダーの瓶が入っていて、お客さんがくると、祖母がガラスコップにサイダーを入れて出していた、そんな時代の話です。
もっともっと昔、母方の祖母は、体力がなく、家事や育児は上の娘たちに任せっぱなしで、母は、姉たちに育ててもらったのだそうですが、それでも、歌舞伎を観に行ったりするときは、いい着物を着て、いそいそと出かけて行くのだそうです。そして、帰ってくると、着物を抜き捨てて、寝てしまうのだそうです。そうしたら、母の姉たちは、「おかあちゃんがしんどなったはる。はよ、天ぷらうどん頼んで来て」と母に言うのだそうです。もちろん姉たちは、母親が脱ぎ捨てた着物のお世話をしなくてはなりません。そんな祖母だったようです。
そして、近所のお店の出前の天ぷらうどんを食べると、祖母は元気になったのだそうです。夜遅く、ひとつだけでもちゃんと届けてくれた、そんな時代だったようです。
あんかけうどんは、小さいころの私の思い出の味です。もちろん、私が小さかったときのあんかけうどんには、卵もおあげも入っていません。そういうのが町のおうどん屋さんに出てきたのは、もう少しあとの時代だと思います。