五条坂から清水さんに行く道に、いつ行ってもいいものが置かれているお店があります。
ギャラリーたなかさんと、夢見坂さんです。
ギャラリーたなかさんで今回買ったのは、秋らしい赤絵のマグカップ。
夢見坂さんで買ったのは、秋の草花なでしこの絵の扇子と扇子を入れる西陣織の袋。
この扇子は、25人の人の手がかかっている正真正銘の京扇子だそうです。
京扇子の特徴は、「陰陽」の絵柄になっているというのがあるのだそうです。
表が陽。
裏が陰。
京扇子と思って京都で扇子を買っていく人が多いけれど、ほんとの京扇子は、京都でもなかなか売っているお店は少ないのだそうです。たいていが東京に行ってしまうのだとか。
この扇子、扇ぐととてもいいお香の香りがするのです。これも京扇子の特徴のひとつだそうで、お香を焚きこめながら香りをつけるのだそうです。
扇子ごとに香りがちがっていました。一番気持ちが落ち着く香りと、一番気に入った絵柄がこの扇子だったので、買ってしまいました。
お店の方が、最近の観光客相手の着物の着付けを嘆いておられました。ベトナムから300円で買い込んだ着物を着付けして、実にケバケバしい柄のものを観光客に着せているのは、ほんとの日本の着物の文化ではない!ということでした。
実は、私もとても気になっていたのです。たとえば、着物文化というのは、季節の絵柄をとても大切にするものです。それなのに、ポリエステルの生地は、まあ、やむをえないとしても、真夏に椿の柄の着物であったり、桜であったり、季節がめちゃくちゃなのです。
京都を訪れる中国人、韓国人の人たち相手の着物の着付けは今、大流行です。京都ではほんとに中国人、韓国人であふれています。大丸でも館内放送は中国語が流れ出しました。
着物を着て歩いている人たちはたいてい中国人か韓国人観光客です。日本の文化を楽しんで着ておられるのです。だからこそ、せめて、季節感というものを教えておげてほしいなあと思うのです。
私は、季節ごとに洋服の色も気になるほうです。まだ残暑の頃とはいえ、秋になったのに、華やかな明るいオレンジに真っ白のパンツスタイルの人を見ると、それって、え?と思ってしまうほうなのです。私にとっては、初夏の色です。
そんな話を、オーストラリア人のHさんにしていたら、オーストラリアでは、季節に合わせて色や柄を変えるということはまったくない、ということでした。オーストラリアの季節というのは、微妙なもので、四季はあることはあっても、真冬でも温暖だったりするので、あまり季節感というのを意識しないのだそうです。日本に来て、初めて「季節感」ということを聞いたと言っておられました。
オーストラリア人のHさんと話していて、逆に私のほうも、案外そういうのもいいのかも・・・と思うようにもなりました。
たとえば、年を取ったら、ピンク色は華やかでとてもきれいです。華やかなオレンジ色でもそうです。そういう美しくてきれいな色に一年中包まれているというのも楽しいだろうなと思ったのです。秋だからとシックな色を身につけなくてもいいかな、と逆に気付かされました。
ただ、陽射しの色が、やはり日本では微妙にちがうと思うのです。陽射しの色と季節の色って、とても似合っていて、相性がいいと思うのです。
たとえば、花の色が季節にとても似合っていると思うのです。3月に咲く菜の花やフリージャの黄色、3月の終わりから4月の初めに咲く桜の淡いピンク色、5月に咲く藤やあやめの紫系の色、青葉の黄緑、6月のユリの花の白色、秋の初めの赤とんぼや夕陽や彼岸花などの赤色といった具合に、季節ごとの陽射しの色合いと、その季節の自然の花の色って、合っていると思うのです。日本の自然に似合った色合いのように思います。
ただ、冬は不思議です。暖かいパステル調の色も暗い色も似合うのです。
季節感を大切にしたり、また、そういうことには縛られずに好きな色を着たり、まあ、いろいろすればいいのだなと思うのですが、でも、やはり、着物は季節感を大切にしてほしいなあと思っているのです。日本の文化って、そういうものなのですよ、と外国からの観光客に教えながら着付けをお商売にしてほしいなあ。
また、洋服の場合も、やはり、季節の訪れを感じて楽しむというのは、季節感のある色合いを楽しむことでもあります。季節感を楽しむこともまたとても幸せなひとときです。
和菓子でもそういう楽しみがあります。立秋になったころ、青柿の和菓子が出ます。ああ、もう秋が近づいてるんだな、というのを、青柿で感じるのはとても心が豊かになる感じがします。