雑感 ~3~ 「かの子繚乱」

 
            月に2回、通っている現代文学の講座。
            今回は、「かの子繚乱」(瀬戸内晴美)でした。
 
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 だいぶ昔の本です。太陽の塔でおなじみの、岡本太郎の母・岡本かの子の伝記小説です。
 
 夫以外にも、あと2人の男性とも同じ家に暮らし(なんて奇妙な境遇で、岡本太郎は育ったのでしょう!)、3人の男性に尽くされて、そのエネルギーを目いっぱい吸い取って生きた、かの子。そのかの子のあまりにも真っすぐで、エネルギッシュで、ナルシストな生き方は、なかなかすごかったけど、おもしろかったです。
 
 今日の講座では、瀬戸内晴美が、夫・岡本一平のことを、ここまでかの子に自己犠牲を強いてかの子のために生きたという描き方をしているのは、そんなことはどう考えてもありえないもので、これは、作者の男性へのあこがれが表れたものだという話がありました。
 
 なるほど、瀬戸内寂聴さんの、「こんな男性、いたっていいじゃない」という声が聞こえてきそうです。
 
 この解釈もなかなかおもしろいと思いました。そういえば、同じく瀬戸内晴美の「美は乱調にあり」にも、伊藤野枝を成長させるために、とことん自己犠牲を強いた男性・辻潤が出てきます。彼も岡本一平と同じような男性でした。そんな女性のためにとことん尽くす男性を、よりによって、酸いも甘いも十分知り尽くしたと思われる瀬戸内晴美が描くというのが、おもしろいことだと思いました。
 
 かの子の歌がたくさん紹介されていますが、歌がなかなかうまかったようです。また、かの子の作品「東海道五十三次」というのは、昔は教科書にも載っていて、この作品を読んで、東海道に憧れたと、講座の先生もおっしゃっておられました。とても素晴らしい作品だったようで、川端康成もその作品を片手に、東海道五十三次を歩いたとか。http://www.aozora.gr.jp/cards/000076/files/448_19598.html
 
 でも、その作品、とんでもない思い違いが・・・。お寺の名称につく「○○山」というのをかの子は「山」だと思って、山がそびえているように描いたようです。川端康成が実際に歩いてみて、その誤りに気付いたようです。
 
 これは、夫から話を聞き、かの子が想像して描いたので、それで実際には見てない景色を描いているから、まちがっているのだろうということでした。
 
 夫が、常にかの子に小説の題材を与え、かの子がそれに刺激されて描く。かの子の作品は、どれもみな、夫との合作のようだったみたいです。夫・息子・そして、夫以外の男性との同棲生活、そんな夫婦のあり方でしたが、かの子と夫の絆はそんな形で終生結ばれていたようです。
 
 また、パリに留学し、離れて暮らしていた息子・岡本太郎と、母・かの子の文通も紹介されています。息子がほんとに優しい手紙を母に送っているのです。この手紙を読んでいると、この手紙を書いたのが、「人生は爆発だ~!!」と言ってすごい顔した岡本太郎と同一人物だとは、全然思えないような手紙でした。
 
 それにしても、どうしてあんなにわがままで、パワフルで、ナルシストで自信家の、ものすごい女性が(確かに純真なところはあるとはいえ)、どうしてあんなに多くの男性に尽くされ続けたのか、とても不思議。
 
 先ほど、テレビで、池部良さん死去のニュースがありました。二枚目俳優池部良は、岡本一平の甥にあたります。